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フォトショップを使った、幻想的なCGコラージュを、コラムとともに毎週お届けします。「公募展」に寄せられた読者のみなさまの作品をご紹介するコーナもあります。鑑賞派のあなたも、創作派のあなたもぜひどうぞ! |
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■■76号「ドッペルゲンガー」■■ |
2003年12月16日(火) |
◇◆ご挨拶◆◇
私は子供の頃から毎日1冊本を読んで、読書日記をつけています。そんなわけで、よく「オススメの本、教えてよ」と言われるのですが、人に本を薦めるのは難しいですね。相手の好みとか性格、読書暦などをよく知っていないといけないし。それに自分の読書傾向を知られるというのも結構恥ずかしいものです。性格がもろに出ますからね。
で、毎年この時期になると「私のBOOK OF THE YEAR」を勝手に選んだりしてます。読書日記をぱらぱらめくると、「あー、この本良かったなあ」と思い出して感慨深いんですよね。
私が好きなミステリのジャンルに限って今年のベスト5をつけると……
【1】「陰摩羅鬼(おんもらき)の瑕(きず)」(京極夏彦)
【2】「重力ピエロ」(井坂幸太郎)
【3】「透明人間の納屋」(島田荘司)
【4】「街の灯」(北村薫)
【5】「ZOO」(乙一)
こんな感じです。泣けるというか切ないミステリが多いですね。京極夏彦は、残りのページが少なくなるにつれ「ああ、もうこの至福の時が終わりに近づいているのか」という気分になったミステリでした。えー、勝手に決めているベスト5なので苦情、不満等のメールはご遠慮下さい(^_^;)
◇◆今週のギャラリー◆◇

大きな画像はこちら
さて、自分と瓜ふたつの人物と出会った際、その出会いがたんなる偶然を越えた超自然的な、あるいは精神病理学的なオーラに包まれているとき、相手は分身、二重身、ドッペルゲンガーなどと呼ばれる。
(春日武彦 「顔面考」より)
「なにが怖いと言って、夜トイレに行ったときに、自分自身が座っていて、ニヤリと笑うことほど怖いもんはないね」。昔友達が話していたことです。それを聞いてしばらくは、夜にトイレのドアを開けるとき、ちょっとだけ身構えていました。
もう一人の自分に遭遇するのは、確かに怖いですよね。今日のお話は、自分の分身、ドッペルゲンガー(ドッペルゲンゲル)についてです。
ドッペルゲンガーとは、ドイツ語で「二重に出歩く者」という意味です。自分自身にばったりと出会ってしまう不思議な現象で、世界各国様々な人がドッペルゲンガー現象を体験しています。
フランスの文豪モーパッサンは、1889年のある夜、部屋の中に入ってきたもう一人の自分に出会いました。彼は、当時書いていた『われらが心』の文章の続きをぺらぺらとしゃべり始め、モーパッサンはそれを書き留めていったと言います。
『ファウスト』で有名なゲーテは、公園の小道で馬に乗っていると、向こうから馬に乗ってやってくる彼自身を見ました。その男はすぐに消えてしまいましたが、8年後、同じ小道を馬で出かけた時に、ゲーテはその時の服装が、8年前に出会った自分と、まったく同じ服装だったことに気づき驚きました。
ロシアの女帝エカテリーナ、イギリスの詩人シェリー、小説家芥川龍之介も、ドッペルゲンガーに出会ったと言われています。しかも不気味なことに、このドッペルゲンガー現象を体験した者は、まもなく死を迎えるそうなのです。
例外的に、21歳の時にドッペルゲンガーを見たゲーテは83歳まで長生きしましたが、ほとんどの人が、分身を見たとたんにショック死したり、数年の後に亡くなると言われています。
心理学では分身を見ることをオートスコピィ(自己像幻視)といい、自分の身体意識が外部に投影される現象と説明しています。
精神科医の春日武彦さんが『顔面考』という本でドッペルゲンガーについて書いています。彼が紹介している藤縄昭氏の『自己像幻視とドッペルゲンガー』という論文によると、自己像幻視とは
・目の前数十cmから数mのところに、自分自身が見える。
・多くは動かないが、時には歩いたり、動いたりする。
・全身像は少ない。顔、頭部、上半身などの部分像が多い。
・黒、灰色、白などモノトーンであることが多い。
・平面的で立体感を欠き、時には薄く透明な姿で見えることもある。
……のだそうです。そして問題なのは、彼らはそのドッペルゲンガーが、自分と違う年齢、顔、体格、性別であったとしても、「あれは、自分自身だ」と確信していることなのです。
これは精神病の一種なのですが、どうしてちっとも自分に似ていないのに、自分の分身と思い込むのか、理解に苦しみます。人間の心って不思議ですね。
ドッペルゲンガーに出会った人々は、みな驚愕し、恐怖を感じています。最初に書いた友人の話もそうですが、なぜ自分自身を見てしまうことが、そんなに怖いのでしょうか? 自分は誰よりも「一番よく知っている人間」であるはずなのに……。
いえ、最もよく知っている人間だからこそ、「知らない自分」がいることに恐怖するのです。「自分なのに自分でない」という矛盾に頭が混乱し、心の底の本当の自分が具現化してしまうことを、無意識に恐れるのかもしれません。
ところで、私もドッペルゲンガーらしきものに会ったことがあります。それは私が中学生のときのこと。当時私はあるシリーズものの本を読んでいて、市の図書館に毎日通っては1冊ずつ借りて読んでました。
ある時から、誰か知らない人が、そのシリーズを読み始めたようで、私の読んでいない一つ先の本を借りていくようになりました。私が読み終えた本を返しに行くと、次の巻はあるものの、その次の巻がありません。
つまり私よりも先にその本を読んで、ちょうど同じペースで返却して、次の巻を借りていくようなのです。あまり人気のない作家さんだし、かなりの長編なので、誰が借りているのだろうと不思議に思いました。市の図書館はバーコード式の貸し出しだったので、誰が借りているのか分からなかったのです。
そしてある日ついに偶然その本棚の前に立っている人物を見つけました。私と同じ学校の制服を着た女の子で、本を取り出すと、さっと本棚の向こうへ歩いて行ってしまいました。
私は好奇心から慌てて追いかけたのですが、彼女は煙のように消えてしまって、見つかりませんでした。後になって背格好も髪型も私にそっくりだったのに気づきました。あれは私のドッペルゲンガーだったのでしょうか? その後ぱったり、そのシリーズを借りる人はいなくなってしまいました。
まあ、私は今でもぴんぴんしてますから、ドッペルゲンガーではなかったのでしょう。でも今でも時々「あれ」はなんだったんだろう……と思い出すことがあるのです。
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あなたの分身が今何をしているか占ってくれます。あくまでお遊びです。
参考文献
春日 武彦
紀伊国屋書店
1998.12
人間の顔に対する心理を、精神科医である著者 が分析。マンガの顔、人面魚、ドッペルゲンガー、顔が認識できなくなってしまう病気などなど、顔をテーマにしたコラムが興味深いです。
◇◆今週のギャラリーの作業工程◆◇
撮影が大変でした。イスを2つ並べて交互に座って撮るのですが、なかなか光の具合や位置が同じにならなくて苦労しました。「ゆがみ」フィルタや、エアブラシ、指先ツールなどで、分裂したイメージになるように、二人の人物の胴体をつなげます。
背景は全てフォトショップによる合成です。床の木は木材の素材を並べて、変形ツールで遠近をつけ、壁は油絵の素材を引き延ばして作りました。実際にこういう部屋で撮影ができると一番楽なんですけどねー。
◇◆編集後記◆◇
昔の武将は「影武者」と言われる自分とそっくりの人間を周りにおいて、暗殺にそなえていました。平将門には、7人の影武者がいたと言われ、朝廷は彼を殺すことがなかなかできなかったそうです。
ところでフセインがとうとう捕まりましたね。彼も何人もの影武者がいたので、ニュースを聞いて「これもニセモノじゃないかなあ?」と疑いました。でもさすがにDNA鑑定までされたら、本物に間違いありませんね。ドッペルゲンガーの場合もDNA鑑定できたら、本物の分身かどうか分かるんですけどねー。
「幻想画廊」 (c) Maria Garcia, 2002-2008