「これ」さえあれば語学の達人
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16カ国語を独学したロンブ・カトー、何十カ国語を駆使して民俗学を研究した梅棹忠夫、商人として語学で大成したシュリーマン、彼らに共通する「ある要素」。これさえあれば、あなたも語学の達人になれるのです。
以前日本人の暴力団員とフランス人のギャングが東京で現金輸送車を襲い、数億円の現金を強奪する事件がありました。まもなく逮捕された日本人は、事件の前に麻薬の密輸によってフランスの刑務所で1,2年服役していました。彼は服役中にすっかりフランス語をマスターして、フランスのギャングと仲間になったのです。
現金輸送車襲撃のニュースよりも、彼がフランス語をこんなに短い間に習得してしまったことにとても驚きました。フランス語は日本人にとって、決して易しい言語ではありません。発音や格変化などかなり手こずる言葉です。
最近は一流大学を出て多角的なビジネス展開をするインテリヤクザもいると聞きますが、一般的に暴力団員ともなる人は学業優秀、先生の誉れ高きマジメ学生だったというわけではないのでは。それでも彼がこれだけ短期間に外国語をマスターできたのは、例の3人の語学の達人も持っていた「ある要素」があったから。
それは「強烈な動機」。あちらの刑務所でフランス語ができないとなると、かなりやっかいなことになります。「おい新入り、あっちに行け!」と言われてぼーっと突っ立っていたら、ぶん殴られるのがオチです。そりゃあ必死ですよ。私だって彼の立場なら「Va-t'en.(ヴァタン)は『あっちに行け』、Va-t'en.は『あっちに行け』……」と死ぬ気で暗記するでしょう。
「外国語ができなきゃ生きていけない」「夢を叶えるために何が何でも」という強烈な動機があれば、語学の習得は半分以上達成したも同然。語学を学習によって身につけた人は強い動機を持っていたはずです。男子学生に比べて女子学生の方が語学の資格取得に熱心というのも、男子よりも厳しい就職状況にあるからではないでしょうか。
よく「外国人に道を聞かれたとき恥をかかないように」語学を学びはじめる人がいますね。ヌルイです。ヌルすぎます。いったい1年のうち、いえ一生のうち何回「外国人に道を聞かれる」シチュエーションがあるというのでしょう。「フランスの刑務所でのサバイバル」という動機に比べたら、吹けば飛ぶような動機です。
でも同じ「強烈な動機」と言っても、「恐怖・圧力」によるネガティブな動機よりは「将来の夢・希望」というポジティブな動機を持った方が、語学のマスターへの近道だし、その後の人生に語学力を生かせると思います。私の場合ですか? 「一文無しの恐怖」よりは「根っからの知りたがり」の方が勝っていた気がしますよ。

外国語をどう学んだか
現代新書編集部
■様々な外国語をどのように学んだか、34人の文化人が独自のメソッドを紹介。このフランス語マスターの暴力団員のエピソードは、本書の関曠野「刑務所暮しと外国語」から。
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2005年 5月 30日(月)
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