【サーカス】子供の頃のサーカスの思い出──ピエロと猛獣使い

「ずっとサーカスにいるつもり」
「ほかの世界のことはあまりよく知らない。生まれた時からテントにいたから」
「ずっと旅しているのね」
「うん。終わりのない旅」

(『サーカスの少年』松本 隆・安珠 より)

サーカスの思い出

最初にサーカスに行った時、私はまだ5つくらいでした。ある日突然空き地にテントを立てて、しばらく興行した後にまた別の土地へ行ってしまうという、地方巡業しているサーカス団でした。

私と妹は母に連れられてワクワクしながらサーカスへ。テントの中は思ったよりもずっと広くてびっくりしました。やがて照明が落とされ、楽しげな音楽が鳴り始めました。

きらめく夢の世界とその終わり

ゾウが後ろ足で立ち上がり、曲芸師がとんぼ返りをうち、美しい衣装を身につけたブランコ乗りが手を振りました。全てがキラキラと輝いていて、私も妹もすっかりサーカスのとりこになっていました。一番夢中になったのは、虎をあちらこちらと台に飛び移らせる猛獣使いのお兄さん。なんてかっこいいのでしょう!

ピエロが2人出てきて、私たちの方へやってきます。手品をするために、お客さんにステージに上がってもらおうというのです。

「さあ、おじょうちゃんたち、こっちへおいで」

その時、妹が急にわっと泣き出しました。初めて見るピエロが怖かったのでしょう。あまりに大きな声で泣きわめくので、母は真っ赤になって私と妹の手を引いてテントの外へ逃げ出しました。私たちは最後までショーを見ることができませんでした。

どこか知らない場所への旅

私たちが悪いことをすると母はよく「サーカスのおじさんに連れて行ってもらうよ」と戒めました。妹は震え上がっていましたが、私はそれも面白そうだ!とサーカスの旅を夢見ました。あの時ピエロのおじさんの方へ歩いていったなら、サーカスの仲間になれたのでしょうか? どこか知らない場所へ行くことができたでしょうか?

参考文献

『サーカスの少年』松本 隆・安珠

バレリーナとブランコ乗りの甘く悲しい初恋のお話。大沢健・鷲尾いさ子をモデルにした美しい写真集でもあります。私は昔、大沢健君の大ファンでして、うっとりとこの本を眺めていたものです。彼は昔は絶世の美少年だったのですよ。

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