【巨大娘】突如街に現れた身長80mの巨大娘!(ミニ小説・フィクション)

「巨人(Ge’ant)」ということばはgigansからきていて、これは「ガイア(Ge’)」 すなわち大地から、そしてそこだけーから生まれたものという意味です

(『身長の神話 巨人伝説から遺伝子操作まで』カトリーヌ・モンディエ=コル ミシェル・コル より)

醒めない悪夢

「なっ……」ハリーは絶句した。できの悪い冗談か、醒めない悪夢としか言いようがなかった。そこでハリーを見上げているそれは、どう考えても巨大な人間の女だった。

ハリーことハロルド・ブレイク中尉は、午後13時30分に緊急出動命令を受け、米軍機2機とともに横須賀の空母キティ・ホークを飛び立った。上官に作戦命令を告げられたときも、自衛隊機3機に誘導され東京都内に向かう間も、全く信じられなかった。しかしそれを実際目の当たりにすると、ハリーは現実に驚愕することしかできないのだった。

「おい、ハリー、こいつは何だ?」

交信機からハリーの同僚、エドの笑い声が聞こえる。あまりの恐怖を感じると笑いがこみ上げてくるというやつだろうか? それとも単に、あまりに非常識な光景に笑うことしかできないのかもしれない。

「おいハリー、こいつは何だ? 女に見えるのは俺だけか?」

「確かに男には見えないな」

それは困惑しきったようにうつむいていた。不用意に動いたためか、辺りの建物は破壊されてしまっていたが、被害をそれ以上大きくしないようにするためなのか、じっと立ち止まったまま動かない。

戒厳令下の米軍機

それが忽然と現れてから、辺り一帯は戒厳令が敷かれ、住民は数時間前に避難し終わっていた。半径3マイル内にいるのはそれの周囲で決死の消火活動をしている消防隊員だけだった。ハリーとエドは米軍機、F/A-18ホーネットを旋回させながら、上からの命令を待っていた。

ふいにそれが顔を上げた。ハリーの心臓は跳ね上がった。それの1フィートはありそうな灰色の瞳と、たしかに目があった気がしたからだった。そして気付いた。

似ている。あの瞳──本国にいる妹のマリアに似ている。

無情な命令

呆然とするハリーの耳に、無線から上官の声が入ってきた。

「目標を攻撃せよ」

操縦桿を握るハリーの手はグローブの中でじっとり汗ばんだ。鼓動が早くなる。俺にはできない。彼女を攻撃するなんて!

突然、彼女が旋回するホーネットの中のハリーに向かって言った。

「あの……。すみません。トイレはどこですか?」

彼女は出来る限り小さな声でささやこうとしていたようだったが、どうやっても空気をびりびりと振動させるような大音響になってしまうのだった。彼女は赤面した。

参考文献

『身長の神話 巨人伝説から遺伝子操作まで』カトリーヌ・モンディエ=コル ミシェル・コル

巨人と小人について、生物学的、歴史的、民俗学的に考察。どちらかというと小人についての記述が多いですが、なぜ私たちが、大きい者、小さい者に憧れるのかがなんとなく分かりました。

このブログは2001年07月23日開設のサイト「幻想画廊」を2019年にWordpressで移築したものです。この記事は17年前の、2001年12月25日(火)に書かれました。文章の内容を変えずにそのまま転載してあります。リンク切れなど不備もありますが、どうぞご了承くださいませ。

元サイト「幻想画廊」はこちらです。

トップへ戻る