【アリス】『不思議の国のアリス』少女を愛し続けたルイス・キャロルの夢

あんなばかげたお茶の会に出たのは、生まれてはじめてだわ!

(『不思議の国のアリス』ルイス・キャロル より)

ヴィクトリア調写真

今回のギャラリーでは、私の子供の頃(10歳)の写真を使って髪型と衣装を変え、白ウサギやチェシャー・キャットと合成しました。現在の私の顔もブレンドしています。古びたヴィクトリア調のポートレート写真のように見えるかしら?

数学者・ドジソンの趣味

不思議の国のアリス』の作者は1832年に生まれたイギリス人、ルイス・キャロルことチャールズ・ラトウィッジ・ドジソンです。彼はオックスフォード大学の数学と論理学の教授でした。『不思議の国のアリス』は、学長の娘アリス・リデルにせがまれて、彼女を主人公として書かれた物語です。

Carroll in 1855 / Lewis Carroll – Wikipedia

お堅い職業の反動なのか、パズル、望遠鏡、手品など多趣味なドジソン先生。中でも一番の趣味は写真、それも美少女たちのポートレート撮影でした。彼はたくさんの少女たちに、とっかえひっかえ衣装を着せては写真を撮りました。1856年に撮影を始めてからはひたすらこの趣味に没頭し、とうとう1871年に自分だけの写真スタジオまで作ってしまったほどです。

『不思議の国のアリス』で少女を勧誘?

ドジソン先生は写真を撮るために『不思議の国のアリス』の本を少女たちに配りまわって、撮影のモデルを頼んでいました。有名な本の作者ということで彼女たちを安心させたかったのでしょうか。

中でも最も気に入っていた少女はアリスのモデルとなったアリス・リデルです。彼女は4歳から18歳ぐらいまでずっとドジソン先生のモデルでした。

Liddell, aged 7, photographed by Charles Dodgson (Lewis Carroll) in 1860 / Alice Liddell – Wikipedia

ドジソン先生はアリスに執着するあまりに、彼女が13歳の時にプロポーズをしています。その時彼は30歳。当然アリスの家族は大反対で、アリス宛のラブレターを焼き捨てたりしています。

なぜ彼は少女にひかれたのか

Lewis Carroll self-portrait c. 1856 / Lewis Carroll – Wikipedia

彼がそれほど少女に憑かれていたのはなぜでしょう。一つにはヴィクトリア朝というお堅い時代だったため少女への憧れが抑圧され、かえって写真撮影という方向へ加速してしまったということ。

また学生時代の寄宿舎で性的なトラウマを受け、成人の女性と関係を持つことができなくなったのでは──という説もあります。彼は非常に優秀な頭脳を持っていましたが、内気で吃音がありました。少女の前では普通に話すことができるという安心もあったのでしょう。

刹那の美しさ

なんとなく彼の気持ちが分かる気がします。私は少女達が黄色い声で笑い合っていたり、跳ねるように走り回っているのを見るのが大好きなのです。幼い女の子、少女たちのきらきらした眩しい様は、「この美は永遠ではないのだ」という刹那の美しさがあって、苦しくなるような切ない気持ちもします。

彼の場合は性的にもひかれるというのもあったでしょうが、そんな一瞬の美を写真で永遠に残しておきたいという必死な気持ちもあったのではないかと思うのです。女性である私がじっと少女を見つめたり、幼児に微笑んでも別にどうということはありませんが、男性の場合は下手すると通報されたりしますから気の毒ですよね。

昆虫標本のような少女達

ドジソン先生は1880年になってぷっつり写真撮影をやめてしまいました。それは少女達のヌード写真撮影が問題になって騒がれたからです。

残されているたくさんのポートレート作品には、ぼろぼろの服を着て物乞いに扮した少女、チャイナ服でこちらを見つめている少女、読書の途中でふと顔を上げた少女──など様々なポーズの少女たちが写っています。これらのポートレートは、まるで美しい昆虫標本のようにどれも几帳面に名前がつけられ、誕生日の日付とともに分類されていました。

写真の中で、少女たちの時は永遠に止まっているのです。

参考文献

『不思議の国のアリス』ルイス・キャロル 福島 正実訳

誰でもきっと一度は手にしたことがあるはずですが、改めて読んでみると子供向けにしておくのはもったいない、風刺やジョークの数々を発見します。ディズニーの金髪のアリスのイメージが強いですが、実際の黒髪おかっぱのアリス・リデルのイメージで読んでみるのもいいですね。

テニエルでないアリス ※リンク切れ

テニエル以外が描いた様々なアリス

このブログは2001年07月23日開設のサイト「幻想画廊」を2019年にWordpressで移築したものです。この記事は16年前の、2002年06月18日(火)に書かれました。文章の内容を変えずにそのまま転載してあります。リンク切れなど不備もありますが、どうぞご了承くださいませ。

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