【紅葉】どうして色が変わるの? 秋の山を彩る紅葉のメカニズム

ちはやぶる神代もきかず竜田川 から紅に水くくるとは

(昔。神々の時代には不思議なコトだらけだったみたいだけど 紅葉で紅色に染まった 川の華麗な美しさはさすがになかったみたい)

(『LOVE BOOK―現代語訳百人一首』古賀 鈴鳴 より)

「リンゴガリ」ってなあに?

朝、息が白くくもるようになりましたね。山々は紅葉で美しい真紅や黄色に染まり始めています。澄んだ空気を吸いに山へ紅葉狩りなんて素敵ですね!

私は小さいとき「紅葉狩り」は「リンゴ狩り」みたいに葉っぱをちぎって持って帰るものだと思っていて恥をかいたことがあります。オウ、ニホンゴ、ムズカシーデスネー。

みーんなカエデの仲間

モミジというと、赤い手のひらのような形の葉を思い浮かべませんか? 広島の「もみじまんじゅう」など有名ですしね。でもモミジというのはいわゆる俗称で、実際にはモミジ科の植物というのはないんですよ。ヤマモミジやオオモミジ、イロハモミジなども全部カエデ科の植物なんです。

もともとモミジは、紅く染めると言う意 味の「もみいづ(揉出)」という言葉からきています。一方カエデは万葉集に「かえるで(蛙手)」とあることからきています。たしかにカエルの手みたいですね。

紅葉のメカニズム

紅葉とは植物の葉が枯死する前に緑色から紅や黄色に美しく変色する現象で、落葉樹だけでなく常緑樹にも見られます。専門的には、赤く色づくのを「紅葉」、黄色く色づくのを「黄葉(おうよう)」というらしいのですが、ここでは両方まとめて「紅葉」と呼ぶことにします。

赤い葉の色はアントシアンという赤い色素が細胞内に広がったもの、黄色い葉はカロチノイドという色素が浮き出たものです。アントシアンはニンジンなどに含まれていて、カロチノイドはカボチャなどに含まれる色素です。

赤い紅葉と、黄色い黄葉とは逆の化学変化

実は黄色になる木と、赤くなる木のメカニズムは別なんです。カロチノイドはもともと葉の中にあるもの。緑色の葉には緑の葉緑素とカロチノイドが含まれていて、気温が下がって葉緑素が壊れていくとカロチノイドの割合が高くなり、結果的に葉が黄色になるんです。

赤色は葉の中の糖分が紫外線の影響を受けて、もともと含まれていないアントシアンを作り出します。黄色い紅葉と逆の行程ですね。でもこちらの化学変化は実は未だによく分かっていないのです。毎年見られる紅葉も科学的な眼で見てみると、とても不思議な現象なんですね。

日本の自然の美しさ

紅葉は春の桜吹雪とともに、日本の自然の美しさを象徴しています。在原業平の和歌「ちはやぶる 神代もきかず 竜田川  から紅に 水くくるとは」も、紅葉に感動した様子が美しく表現されています。千年も前の人と共感できる自然があるという事は素晴らしい財産ですね。業平さん、神代にはなかった紅葉の美しさは、現代でもちゃんと残っていますよ。

ご家庭でも紅葉が楽しめます!

美しく紅葉するための条件は、気温、光、水の三つが大切。特に重要な要素は気温です。最低気温が8度以下になると葉の色が変わり始め、特に5度くらいから見頃になります。昼と夜の気温の差が大きいほどきれいになると言われていますね。

これを応用してご家庭でも紅葉を作り出すことができるのをご存じですか? 鉢植えの小さなカエデを手に入れたら、昼間たっぷり日光に当てて、夜は冷蔵庫に入れておくんです。そうすると1週間ぐらいで赤くなるんですよ。家にカエデの鉢植えをお持ちの方は、ぜひ試してみてくださいね。

参考文献

『LOVE BOOK―現代語訳百人一首』古賀 鈴鳴

カフェ詩人である筆者が、百人一首を今の私たちが使っている言葉に翻訳しています。紀貫之の『ひさかたの光のどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ』は『光がきれいな春の日に もう少し咲いていてほしいのに 桜の花が散ってゆくよ。ぱらぱら ぱらぱら 散ってゆくよ』となっています。ステキ。

このブログは2001年07月23日開設のサイト「幻想画廊」を2019年にWordpressで移築したものです。この記事は21年前の、2002年11月05日(火)に書かれました。文章の内容を変えずにそのまま転載してあります。リンク切れなど不備もありますが、どうぞご了承くださいませ。

 

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