【ジャイアント】アメリカ史上最も有名なイタズラ!? 巨人化石騒動の顛末

ニューヨーク市に運ばれた巨人石は、アポロ・ホールに飾られ、見物客でブロードウェイ二十八番街はごったがえした。

(『だましの文化史』ゴードン・スタイン より)

スポンサーリンク

巨大娘好きですか?

「幻想画廊」のギャラリーでも密かな人気シリーズ「巨大娘」です。「渋谷ハドコデスカ?」という道に迷う巨大娘の第二弾、「佐藤さん家(ち)はどこですか?」というイメージで描いてみました。

【タ渋谷ハドコデスカ?】新宿都庁に現れた、身長333メートルの巨大娘!
おれのような中年男が、深夜、センター街を一人で移動するなど、とんでもない話である。あえて言えば火薬庫でタバコを吸うようなもので危険きわまりない。(『渋谷一夜物語』山田 正紀 より)

今回は巨人に関するアメリカの事件をとりあげましょう。19世紀後半に起こった「カーディフ巨人石事件」です。

毛穴まである巨人の化石

1869年ニューヨーク州・カーディフで発見された化石は、考古学界にセンセーションを巻き起こしました。それは身長10フィート(約3メートル)の巨人が化石化したもの。苦しそうに身をよじらせて横たわる男の皮膚には、なんと毛穴まであったのです! これがその巨人の化石。うーん、不気味。

ハルとニューウェル兄弟の大発見

発見者の名前はジョージ・ハル。彼はある日、義理の兄弟のウィリアム・ニューウェルに、井戸を掘ってみてはどうかと提案しました。彼らが地元の職人を雇って井戸を掘り始めるとまもなく、巨大な人間の足らしきものが出てきたのです。これが有名な「カーディフ巨人石事件」の始まりでした。

巨人の化石、大評判になる

ハルとニューウェルは発掘された穴の上にテントを張り、一人50セントの見物料を取って見世物にしました。「聖書に登場する伝説の巨人ゴリアテは本当にいたのだ!」と、人々は熱狂し、1日に何百人も見物人が訪れました。

やがて二人は大金を稼ぐと、巨人石を交通の便が良いシラキュースへ移してさらに数万ドルを手に入れました。その後巨人石はニューヨーク市のアポロ・ホールに展示され、ボストン、ニュー・イングランド、ペンシルバニア──など、アメリカ中を興行しました。

19世紀後半に活躍した天才興行師(であり詐欺師)、P・T・バーナムもこの騒動で一儲けしようとした一人で、この巨人石の偽物を作って、本物の巨人石の近くの展示場で「こっちが本物!」とお客を集めたというエピソードもあります。

『グレイティスト・ショーマン』P・T・バーナムってどんな人?
死後100年が経っても『グレイティスト・ショーマン』などの映画で注目を集めるP・T・バーナム。まさに偉大な興行師です。彼の類まれなる商才や、仰天のエピソードをご紹介します。

学者や教授の反対論

しかし当然のことながら、この化石の信憑性を疑う人たちもたくさんいました。考古学者のジョン・ボイントン博士は、宣教師がインディアンへの布教目的で掘らせた彫像だと主張し、地質学者のジェイムズ・ホール教授も、化石でなくただの石像であると判断しました。

イェール大学のオスニル・マーシュ教授は、表面にのみで削ったような跡を発見し、贋作であると発表しました。マスコミも一般大衆も、この巨人石が偽物か本物かで意見が分かれて大論争になりました。

巨人石の真偽はいかに?

結論から言うと、この巨人石は真っ赤なニセモノだったのです。発見者のハルは無神論者でした。ある日キリスト教原理主義者の牧師と、聖書に登場する巨人族について口論になったことから、ニセモノの巨人を作って埋めておいて、世間をあっと言わせてやろうと思いついたのです。

彼は1866年に自分自身をモデルとして極秘で職人に石像を彫らせました。その像の表面を硫酸で溶かし、針を束ねた道具でぶすぶすと刺して毛穴を作るという念の入れよう。それを1年間化石がよく出土するという地中に埋めて「発掘」の日を待ちました。

稀代の天才詐欺師、ジョージ・ハル

4月1日に「幻想画廊」を訪れたみなさんはご存じだと思いますが(エイプリルフールの日は毎年特別企画をやってるのです。見逃した人はまた来年来てね)、私はいたずらが大好きです。こんなサイトをご覧になってるみなさんも、きっと人をかつぐのはお好きでしょう。

ハルがこの壮大ないたずらにかけた費用は2600ドル。発掘まで数年をかけるなど、まったくここまでやる努力や我慢強さにはあきれてしまいます。しかしこれだけ長い年月たくさんの人をだまし続けたハルは、たとえお金が稼げなかったとしても、きっと楽しくて仕方がなかったに違いありませんね。私も「稀代の天才詐欺師」なんて一度は言われてみたいものです。

巨人石は現在ニューヨーク州クーパーズタウンのファーマーズ博物館(Farmer’s Museum)にひっそりと展示されています。お近くへ観光した際には、立ち寄ってみてはいかがでしょう?

参考文献

『だましの文化史 作り話の動機と真実』ゴードン・スタイン 井川 ちとせ 共訳

切り裂きジャック、ノストラダムス、ミステリーサークル、コティングリー妖精事件──世界各国の作り話、だまし話を紹介。なーるほど。こうやって人々は騙される!

Farmer’s Museum (English) ※リンク切れ

一度実物を見てみたい。

このブログは2001年07月23日開設のサイト「幻想画廊」を2019年にWordpressで移築したものです。この記事は16年前の、2003年06月10日(火)に書かれました。文章の内容を変えずにそのまま転載してあります。リンク切れなど不備もありますが、どうぞご了承くださいませ。

元サイト「幻想画廊」はこちらです。

トップへ戻る