【ヒンズーロープ】天まで上がったロープを上る少年はどうなってしまうの?

インド人はその籠から三十フィートばかりの頑丈なロープをとりだし、手を二、三度動かして術をほどこすと、それを空へ投げあげた。ロープはそのまま突ったっていた。

(『登りつめれば』ジョン・コリアー より)

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伝説のヒンズーロープとは?

マジックの歴史に関するどんな本を読んでも、必ず紹介されている伝説のマジックがあります。それは「ヒンズーロープ」です。

日没の広場に、インドの魔術師が弟子たちと共に登場します。魔術師はバスケットの中に長いロープを入れます。魔術師が呪文を唱えるとロープはまるで龍のように勢いよく空へと上っていき、先端が見えなくなるとぴたりと止まります。

魔術師が弟子の一人の少年にそのロープを登るように命令します。ロープを上る少年の姿はやがて小さくなり見えなくなってしまいます。魔術師は空の少年に向かって、降りてくるように叫びます。

少年の運命やいかに!

しかし少年はいつまでたっても下りてきません。魔術師は顔をしかめると、ナイフを口にくわえて同じようにロープを登っていきます。しばらくして世にも恐ろしい叫び声が空に響き渡ります。すると少年の足、腕、胴、頭が、バラバラと地上に降ってくるのです。

血まみれの魔術師がロープを下りてきます。魔術師は少年の死体を集めてバスケットの中に入れ、布をかけて呪文を唱えます。するとあら不思議、バスケットから少年が飛び出します。少年の体はどこにも傷はありません。

ヒンズーロープのトリック

この有名な奇術を最初に紹介したのは14世紀のアラブ人旅行家イブン・バトゥータです。彼の記した書物『都市の不思議と旅の驚異を見るものへの贈物(長っ! 略して『旅行記』)』の中に、1346年の「中国」で、この不思議な奇術を見たと書いてあります。なぜインドの魔術師集団がわざわざ中国でストリートパフォーマンスをしているのか? というツッコミはこの際置いておきましょう。

古今東西様々な研究家がこのトリックの解明をしようとしてきました。薄暗い夕暮れ時に2本の高い木の間で行われることが多いことから、助手が木にわたしたヒモを使ってロープをつり上げたという説。

双子の少年の一人が上に登り、ヒモにくくりつけた人形の死体を地上に投げ、バスケットに隠れていた双子の片割れが元気に飛び出すという説。または魔術師は優れた催眠術師で、観客を集団催眠にかけたのだという説──

いったい魔術師はどんなトリックを使ったのでしょう?

アメリカのマジックショーで

ここで私がアメリカでマジックのショーを見たときのことをお話ししましょう。そのショーの観客を見て気づいたことがあるのです。

それは観客のマジックを見るときの反応でした。日本人の多くは「騙されないぞ!」と、目をこらしてマジックを見ることが多いように思うのですが、そのショーの観客は「騙されることが楽しい」と思っているかのようにニコニコしながら見ていたのです。

騙されるのもまた楽しい

最近有名なマジシャンが持ちネタのトリックを公開する番組が人気ですね。あのトリックを徹底解明!──なんて。私もつい見てしまうんで、興味深いことは否めません。でもトリックを知ってしまった後、なんだかつまらなくなりませんか?

マジックを見るときは「なんとかトリックをみやぶってやろう」と思うよりも、「見事にやられた」と笑っている方がずっと楽しいのではないでしょうか。

心の中の幻の魔術

ヒンズーロープはバトゥータの他に見た人がほとんどいないため、創作なのではという人もいます。しかし実際に存在した奇術だったのかどんなトリックだったのか、未だによく分かっていないからこそ、いつまでも人々の心に残る伝説のマジックとなったのでしょう。

もしみなさんがインドを旅行して幸運にも目撃することができたら、ぜひ私にもお話を聞かせてくださいね。

参考文献

『魔術ミステリ傑作選』オットー・ペンズラー

魔術・奇術に関する短編ミステリが13篇入っています。非常に癖のある作品もありますが、マジックファンならぜひ読んでみてください。ジョン・コリアー による『登りつめれば』はヒンズーロープについての奇妙なお話。

このブログは2001年07月23日開設のサイト「幻想画廊」を2019年にWordpressで移築したものです。この記事は16年前の、2003年03月04日(火)に書かれました。文章の内容を変えずにそのまま転載してあります。リンク切れなど不備もありますが、どうぞご了承くださいませ。

元サイト「幻想画廊」はこちらです。

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