帽子と同じく上着も赤で、白の縁どりがしてある。ズボンも赤で、裾は重たげな黒いブーツにたくしこまれた。
(『クリスマスウォッチング』デズモンド・モリス より)
大人にだってプレゼントを
赤いドレスに白い羽をつけたマリアサンタです。今年一年頑張った大人たちに、自動車や家などでっかい贈り物を配り歩いていますよ。ちょっと疲れてビルの谷間で一休み。好評の巨大娘シリーズです。
Joy to the World! 今もどこかで戦争が続いていますが、どうかこの日だけでもこの世界に平和と喜びあれ!
サンタの衣装
ところでサンタクロースと言えば、白い毛皮のついた赤い上着に、赤いズボン。ナイトキャップのような赤い帽子に、黒の長靴。誰でもこの衣装を思い浮かべますよね。
最近ではコスプレ用の赤いスカートコスチュームや、赤白のブラとショーツにガーターベルトなんていう、クリスマス用セクシー下着なんていうものもドンキホーテ(深夜営業の大型小売店)の店頭に並んでいたりしますね。赤と白であれば何でもOKといった感じです。
ま、風邪で寝込んでる私には関係のない話ですけどね(うう。ちょっと後ろ向き)。でもどうしてサンタクロースの洋服が赤と白なのか知っていますか?
伝説や神話とは全く関係なし
デズモンド・モリスの『クリスマスウォッチング』によると、実はあの赤と白の衣装はコカコーラ社が決めたそうなのです。あの世界的に有名な清涼飲料水メーカーですね。昔からの言い伝えなどとは全く関係ないんだとか。
コカコーラ社が広告のキャンペーンをするまでは、サンタクロースの衣装というのは特に決まっていませんでした。しかし、コカコーラの一大キャンペーン以降一変してしまったのです。
それ以前のサンタクロース
昔のサンタは色んな色の服を着ていました。緑も、水色も、茶色も、赤も。北欧のイメージから、全身茶色の毛皮で覆われたあったかそうな衣装のサンタもいました。もともとサンタクロースのモデルとなった聖ニコラウスは司教ですから、司教服姿で描かれることも多かったのです。
コカコーラ社の販売促進キャンペーン
1931年のこと。コカコーラ社は冬のキャンペーンのためにサンタクロースをキャラクタとして使うことにしました。冷たいコーラは冬にはどうしても売り上げが落ちてしまうので、大々的に販売促進の広告を打たねばならなかったのです。
雇われたのはハッドン・サンドブロムというアメリカ人の画家。彼はコカコーラ社のシンボルカラー「赤と白」を衣装に使うことにしました。サンドブロムはご近所の、引退したセールスマンのおじいさんをモデルにしたそうです。
まるまると太った陽気なおじさんにたっぷりとした白いヒゲをつけて、赤い上着とズボンを着せました。黒いベルトをお腹に巻いて、どっしりしたブーツをはかせて、はいできあがり。
現在私たちが想像するサンタクロースは、たった一人の画家が創り上げたイメージだったのです。
思い思いのサンタクロース
このエピソードを知ったとき、サンタのロマンチックな伝説と、アメリカナイズされた商業広告とが結びついていることに驚きました。そして世界中の子供たちに「サンタさんの絵を描いて」と言ったら、赤と白のクレヨンを選ぶだろうと思いちょっと残念な気がしました。
サンタクロースというのは一種の妖精です。妖精を実際に見たという人はほとんどいないわけなので、コカコーラ社のキャンペーン以前は、子供たちは思い思いのサンタクロースを想像したことでしょう。
人魚のイメージが決まってしまったら
たとえばこのギャラリーでも何度か取り上げた「人魚」。昔の文献の絵を見ていると、実に様々な人魚像があって面白いのです。首から下が直接魚になっているもの、尾びれが二股に別れているもの、ヘビのように長い胴のもの、猿のような変な顔をしているもの……。
私も胴が短く短足の中国風人魚、つるりとしたイルカのような人魚、ウロコとひれが魚っぽい人魚など、いくつか描いてみました。人魚は自由に想像できるので楽しいのですが、もし「人魚は赤い魚の下半身で、金髪、青い目」なんて決まってしまったらつまらないなあと思うのです。



子供達の一番の関心ごとは?
まあ、でも。子供たちが実際にワクワクしながら想像するのはサンタさん自身よりも、サンタさんがくれるプレゼントの方でしょうね。そして、そのサンタさんの顔は、サンドブロムの描いたおじさんではなくて、優しいお父さんの顔かもしれません。
参考文献
『クリスマスウォッチング』デズモンド・モリス
クリスマスに関する53の謎について解説しています。著者 がイギリス人なので、イギリスのクリスマスの様子が分かります。イギリスの女王様はなぜクリスマスのスピーチをするようになったかは知りませんでした。
Coke and Santa (English) ※リンク切れ
コカコーラのサンタイラストがたくさんありますよ。
このブログは2001年07月23日開設のサイト「幻想画廊」を2019年にWordpressで移築したものです。この記事は19年前の、2003年12月23日(火)に書かれました。文章の内容を変えずにそのまま転載してあります。リンク切れなど不備もありますが、どうぞご了承くださいませ。